バトルマンガを描くにはどうしても「キャラごとの能力」が必要になってきますが、その能力設定をどんなふうに考えるかというのが今回の記事です。
多くの場合は、能力を付加しようとしているキャラのイメージや性格から想像してみたりとか、あるいは能力設定のほうが先にあって、どんな奴ならこの能力を面白く使えそうかというところから考えたりするでしょう。
つまり、キャラが先か能力が先か、という違いですね。一概にどっちのほうがいい、なんてことはないでしょう。ただ取っ掛かりとして、どちらのほうがやりやすそうかというのはあるかもしれません。
で、今回はキャラのほうから考えてみるところでのポイントを記事にしてみました。能力設定を考えるのに、キャラの性格や行動における長所と短所の使い方を1つのポイントとすれば考えやすくなるのではないかという話です。
実際の連載作品を例にして見てみましょう。
短所を長所に転換させる
これは2010年第28号に掲載された、『PSYREN』をモチーフにした解説です。「死の危険が見える」という「幻視」の能力を持つに至ったキャラを取り上げて、なぜ彼がそんな力を持つことになったのかが解説されています。
ここで言われているのは、もともと逃げ癖の強かった彼が発現させた能力が「危険察知」であったことの説得性と必然性ですね。
まあこれだけでは、危険を察知する能力を使うキャラとして逃げ癖のある性格ということになったのか、それとも逃げ癖のあるキャラが使うのにわかりやすい能力として「危険察知」を思いついたのかはぶっちゃけわかりませんが。ただ、納得できる能力設定であることは確かですね。
ここでは、逃げ癖という短所を、危険を察知できるという長所に転換しているのがポイントです。長所と短所は表裏一体とはよく言われることですが、まさにそれを実践してみせた例といえるでしょう。
では次の例はどうでしょう。
長所をさらに強調する
2008年第1号掲載の『D.Gray-man』キャラ講座です。
3人のエクソシストを取り上げて、それぞれの能力とキャラが説明されています。
大雑把に言えば、ラビは槌という戦闘に不似合いな武器を使うことによる傍観者的立場の強調、アレンは短距離型能力で敵へ接近することによる激情の伝達、神田は日本刀という武器の持つ鋭さと静かさをそのままキャラとして併せ持っているというものですね。
これは、「短所を長所に転換させた」という先程の例とは違って、「長所をそのまま延長・強化させる」能力設定なんですね。
相手に近づいてこそ力が発揮されるアレンの能力は、接近した敵に対して攻撃とともに感情もぶつける演出を可能とするもので、その信念や感情を読者にもはっきりと伝えることができるもの。主人公というキャラにはふさわしい設定といえるでしょう。
神田の場合は、使う武器のイメージと本人の性格的印象が一致していることでしっかりキャラが立つという効果を生んでいます。
これらは、そのキャラがその能力を持っていることへの納得性というよりは、能力まで合わせてのキャラ像ということで読者に理解させるものといったほうが正しいでしょう。
ラビだけは、傍観者の立場強調ということで長所ではありませんが、ブックマンとしての彼の根本を示すものと考えれば同質の意味を持っていると言えるでしょう。
特殊能力もキャラの一部
バトルマンガでの特殊な能力や特別な力の設定というのは、まあぱっと見には「何か凄いことができる」という意味で長所のようなイメージになるんですよね。ならば、その長所をどう活かすか、というのが次の問題です。欠点のような部分を上手に利点として活かすのか。それとも長所を強化する形でキャラと能力を同時に作り上げるのか。
いずれにしても、特殊能力はそのキャラの重要な一部であることは変わりません。能力設定がしっかりキャラの魅力に繋がっていること、それを心がけてキャラ作りに励んでみてはいかがでしょうか。
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