…はい。
えーと、今回はこの人のインタビュー記事です。
2008年第15号に掲載された、当時トレジャー佳作を受賞して間もない荻野ケン先生のインタビューです。文字読めないと思いますので、クリックで拡大。
このインタビューは、実際のトレジャーの受賞者に対するものということで質問もそれに沿った内容になっていますね。それによって明らかになっているポイントがいくつかあります。
まず、自分の武器を知ること。
質問1で、荻野先生はマンガにおける自分の最大の長所として「画力」を挙げていました。インタビュー横に載っているイラストは多少粗いですが、この記事冒頭のイラストは結構なレベルであることがわかると思います。画力が武器という認識は、確かに間違っていはいないんですね。
じゃあその武器をどう活かすかということを次に考えなければいけません。画力を武器とするのならば、絵が映える話や展開、シーンを盛り込む必要が出てきます。
大迫力のバトルマンガであるとか、壮大な世界観の街や城であるとか、美少女が活躍するお色気とか。
さらに、そうしたジャンルだけにこだわらずに、1コマ1コマにおける構図やアングルにも最大限の注意を払うことで、より緻密でダイナミックな画面構成が可能となることでしょう。
受賞後にはどんな感じになるのか
誰もが目指そうとしている入賞。実際にそれを勝ち取ったとして、その後はいったいどんな感じになるのかというのが2つ目の質問ですね。
荻野先生の場合、周りの環境が大きく変化したわけではないようですが、やはり作品の制作にあたる時間は格段に増えたそうです。
画力が武器という自覚を持っているわけですから、その練習はずっと欠かさないが、しかし原稿を描く、ネームを描くといった実際の作品作りをする時間が増えたんですね。受賞がゴールではなく、そこから今度は掲載を目指すわけですから、次の作品を作り上げることに注力するようになるのは当然のことといえるでしょう。
もう1つ、担当編集がついたということ。おそらくは受賞の前後でこれが最大の変化なのではないでしょうか。自分の担当編集がつくということは、プロの目を持つ最初の読者を手に入れることと同義なんですね。
受賞前でも、親しい友人に一番に見せたりして「最初の読者」はいたでしょう。しかしその批評はあくまで素人の目から見たものです。実際にその作品を売り出すことによって利益を出すことを目指しているプロの視点とは全く異なるもので、おそらく敵わない部分も大いにあることでしょう。そんなスキルを持つ最初の読者が、直ぐに連絡のつくところに存在するということ。その上、何時間でも作品作りの相談に乗ってくれること。
そこでは、思いもよらなかった視点を得ることもあるはずです。画力を武器だと認識していたのに、実は台詞回しもセンスがあったとか自分では気づかなかったことにも気がつけるでしょう。
ただそれは別の点で言えば、自分が思ってもみなかった指摘を受ける可能性があるということでもあります。その時に、果たしてその指摘や忠告を受け入れることができるのかどうか。人としての器の成長もまた、そこでは必要となるでしょう。器の成長はそのまま自身の中から生まれてくる作品の深化にも繋がることは言うまでもありませんね。
目指すものがはっきりすること。
こうした変化や成長がなんのためにあるかといえば、もちろん作品を誌面に掲載することですね。
つまり、受賞によってさらに目指すべきものがはっきりとくっきりと見えてくることになるわけです。
連載するためには、読切の掲載にこぎつけないといけない。
読切を掲載するためには、載せられるレベルの作品を描かないといけない。
載せられるレベルの作品を描くには、自分自身の成長とともにプロの目を持つ人からのアドバイスにも耳を傾けないといけない。
プロの目を持つ人からのアドバイスを受けるには、その人に作品を見せないといけない。
プロの目を持つ人に作品を見せるには、応募なり持ち込みなりを実行しないといけない。
応募なり持ち込みなりを実行するには、そのための作品を1つ作り上げないといけない。しかも本職の傍らで、ですね。
ジャンプにかぎらず、雑誌での連載を目指すとはかくも長く険しい道程なのですね。
そしてこの荻野ケン先生。 この記事を書いている現時点ではまだ連載はされてはいませんが、読切の掲載はすでに果たされています。ただ、トントン拍子というわけではなかったようです。
なぜなら、トレジャー受賞を果たしてから、実際にジャンプ誌面で作品を発表するまでに結構長くかかっているからです。いつかといえば、2014年。受賞自体は2007年だったようなので、実に7年あまりも水面下でくすぶっていたことになります。
そうしてようやく発表された作品が、ジャンプNEXT2014年Vol.1『レディジャスティス 人生最悪の日』でした。冒頭の画像はその時の作者紹介ページに描かれたものなんです。どういう作品であったかは、ご想像にお任せします。多分想像通りです。
こんな作品を描いてくれる方ならぜひ連載していほしいと思っているんですけどねえ…
※2015年第25号から『レディ・ジャスティス』とのタイトルで連載決定しました。
【画像あり】『レディ・ジャスティス』の新連載が楽しみすぎるので読切りを振り返っておこう – 社会の毒 ―少年漫画症候群(ジャンプシンドローム)―
読みきり時代の話の後というわけではなく、それはそれとして新たな物語を描いていくことになるようです。とってもたくさん期待しましょう。
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