この記事の続きです。
オサレ先生と言われて、センスばかりを駆使してマンガを作っているかのようなイメージのある久保先生ですが、実は結構計算の上で決めシーンを演出しているのではないかと考えてみた前回。
今回もまた、それに沿った実例を見ていこうと思います。
読者を飽きさせない構図
1つ目はこちらのシーン。
2010年第40号に掲載の解説です。
「読者を飽きさせない構図」として、2つのシーンが取り上げられています。
右側は、前回も触れたコマ割りと関わるものですね。
あえて全体図を描くことなく、部分的に少しずつ見せていくことで次の大ゴマにやってくる全体を印象的に見せようと企図する演出手法です。
構図、という意味では左側の方がよりテーマに近いでしょう。「緊張感を高める構図」として説明されている藍染と平子の会話シーンです。
因縁のある2人が対峙しているシーンにおいて、それぞれの顔を描いたコマの距離を縮めることで今にも激突しそうな緊張感を生み出しているんですね。
セリフを印象的に魅せる
続いての例はこれ。
2010年第41号掲載の講座です。テーマは「セリフを印象的に魅せる」こと。
護廷十三隊と仮面の軍勢との邂逅場面で、誰の敵で誰の味方か、ということを印象的に描いたシーンです。
解説の中では「敵」「味方」という2つのワードが何度も登場することによる両者の関係性の強調という部分が説明されていますが、他にもそれを補完する手法として、コマ割りが極端にシンプルになっていることが挙げられるでしょう。
長方形のコマが淡々と並び、殆ど一切の動きや流れといったものが存在しない中で、ただセリフのみが流れていく。意図的にセリフに対しての注目を集めるためのコマ割りでしょう。
そうして注目させたセリフで、2つのワードが何度も登場して、最終的には「主人公」に帰着するという構成。少年漫画として実に正しい行き先ですね。
やっぱり久保先生は計算して決めシーンを演出している
オサレオサレと言われて、描きたいことや描きたいシーンを描きたいように描いているかのようなイメージも実は持ってた久保先生。ですが、演出手法をこうした形で解説されると、必ずしもそういうわけでもなさそうだということに気がつきますね。
あるいは、そのセンスによって「魅せ方」までも何となく把握していらっしゃるのかもしれませんが…
そんな風に演出にページを割いてるから1週の中身が薄くなるんだよというツッコミは禁止でしょうか。
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